仮想通貨で大損したあなたへ。それでも確定申告をすべき「本当の理由」
「今年は仮想通貨で大損してしまった…利益も出ていないし、確定申告なんて面倒なだけだ」
そんな風に、重い気持ちでこのページを開いたのではないでしょうか。その気持ち、痛いほどわかります。私自身、2017年のバブルで得た利益が、その後の暴落で一瞬にして溶けていく地獄を味わいました。一時は1.5億円あった含み益が、わずか1000万円に。失った資産は1.4億円。あの時の絶望感は、今でも忘れられません。
だからこそ、損失を出したあなたの心が、確定申告から逃げたいと叫ぶのも当然のことだと思います。しかし、少しだけ私の話を聞いてください。その「面倒」の先に、未来のあなたを助ける、重要な意味が隠されているとしたら?
この記事では、「仮想通貨の確定申告で損失のみ」という、まさに崖っぷちの状況にいるあなたのために書きました。単なる手続きの話ではありません。私が巨額の損失から学んだ、投資家としての「守りの哲学」であり、あなたが二度と同じ轍を踏まないための道標です。さあ、一緒にこの荒波を乗り越えるための羅針盤を手にしましょう。
「損失だから申告不要」という、最も危険な思考
まず、あなたに伝えたい最も重要なことがあります。それは「損失だから申告しなくていい」という考えが、いかに危険かということです。

確かに、年間の仮想通貨取引を通算して最終的に損失で終わった場合、所得税は発生しないため、確定申告の「義務」はありません。しかし、それを「何もしなくていい」と捉えるのは早計です。
なぜなら、申告をしないという選択は、将来得られたかもしれない節税の機会を自ら放棄し、万が一の税務調査のリスクを高める行為に他ならないからです。私が市場から手痛い洗礼を受けたように、税の世界も「知らなかった」では済まされません。申告は、未来の自分を守るための、最高の保険なのです。
もし申告を怠ればどうなるか。数年後に税務署から問い合わせがあった時、あなたは慌てて過去の取引記録を探し回ることになります。そして、もしその年に他の仮想通貨取引で少しでも利益があったことが発覚すれば、無申告加算税や延滞税という、重いペナルティが課される可能性すらあるのです。
【最重要】多くの人が誤解する「繰越控除」の真実
さて、損失申告について調べると「繰越控除」という言葉を目にすることがあるかもしれません。これは、ある年の損失を翌年以降の利益と相殺できる制度のことで、株式投資などでは認められています。
しかし、ここで非常に重要な事実をお伝えしなければなりません。2025年6月現在の日本の税制では、仮想通貨取引で生じた損失(雑所得)を、翌年以降に繰り越す「繰越控除」は認められていません。

「え、じゃあ損失を申告する意味ないじゃないか!」そう思いましたか? 確かに、この事実は多くの投資家にとって厳しい現実です。株式投資と同じように考えていると、大きな戦略ミスを犯すことになります。
なぜ仮想通貨は繰越控除ができないのか。それは、仮想通貨の利益が原則として「雑所得」に分類されるからです。税金のルールブックでは、所得の種類ごとに扱える範囲が決まっており、雑所得の損失は、残念ながら翌年に持ち越すことができないルールになっているのです。これは、仮想通貨がまだ新しい資産であり、税制が追いついていない側面もあります。
ではなぜ、損失でも申告を検討すべきなのか?
繰越控除ができないのに、なぜ私はあなたに申告を勧めるのか。それには、3つの明確な理由があります。これこそが、ベテラン投資家が実践する「守りの戦略」の核心です。
1. 同じ年の「他の仮想通貨利益」と相殺できる(内部通算)
これが最大の理由です。あなたは「今年はトータルで損失だ」と思っているかもしれませんが、その内訳はどうなっていますか?
例えば、年初にAコインで50万円の利益を確定させた後、年末にBコインで80万円の損失を出したとします。この場合、年間の合計は30万円の損失です。しかし、もしあなたがAコインの利益50万円について申告を怠ると、税務署は「利益だけ申告していない」と判断する可能性があります。その場合、50万円の利益に対して課税されてしまうのです。

確定申告でAコインの利益とBコインの損失をきちんと両方申告(内部通算)すれば、年間の損益はマイナス30万円となり、所得税はかかりません。「仮想通貨 確定申告 損失のみ」という状況を正しく証明するために、申告は不可欠なのです。
2. 経費を計上し、将来の「勝ち」に繋げる
損失の年だからこそ、経費の計上を忘れてはいけません。仮想通貨取引のために使った費用は、経費として損失額に加えることができます。
- 取引所の手数料
- 仮想通貨の勉強に使った書籍代やセミナー参加費
- 取引に使うPCやスマートフォンの購入費用(按分が必要な場合あり)
- 損益計算ツールの利用料
これらは、認められる可能性のある経費の一例です。たとえ少額でも、記録し、計上する習慣をつけることが大切です。それは節税というだけでなく、自分の投資活動一つひとつにコスト意識を持つという、投資家として最も重要な訓練でもあるのです。
3. 税務署に対する「誠実さ」の証明
価格チャートが市場参加者の欲望と恐怖の総体であるように、確定申告書は、あなたの社会に対する誠実さの証明書です。
損失の年であってもきちんと申告を行うことで、「私はルールに従って、正直に取引結果を報告しています」という意思表示になります。これは、将来、万が一税務調査の対象になった際に、あなたを守る盾となります。記録も何もなく、ただ「損したから」と主張するのと、正確な計算書類を添えて申告しているのとでは、調査官の心証は天と地ほども違うでしょう。

損失申告の具体的な手続きという「航海術」
では、具体的にどう進めればいいのか。難しく考える必要はありません。一つずつ、羅針盤の指す方へ進んでいきましょう。
1. 航海日誌(取引履歴)の準備
これが全ての基本であり、あなたの命綱です。利用している全ての取引所から、年間取引報告書(またはそれに準ずる取引履歴データ)をダウンロードしてください。CSV形式でダウンロードできることが多いはずです。
2. 損益計算という「海図」の作成
ダウンロードした取引履歴をもとに、年間の損益を計算します。これは、手作業(Excelなど)で行うことも可能ですが、取引回数が多い場合は、仮想通貨専門の損益計算ツールを使うことを強く推奨します。これらのツールは、複雑な計算を自動化し、あなたの時間を大幅に節約してくれます。
3. 確定申告書の作成と提出
計算結果が出たら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して申告書を作成します。仮想通貨の損益は「雑所得(その他)」の欄に記入します。作成したデータは、e-Taxを使えばオンラインで完結でき、非常に便利です。
もし、どうしても一人で進めるのが不安なら、税理士という経験豊富な航海士に相談するのも賢明な選択です。特に仮想通貨に詳しい専門家であれば、あなたが見落としている点も指摘してくれるでしょう。

※本記事に記載されている税務に関する情報は、2025年6月時点の法令等に基づいています。税法の解釈や適用は個々の状況により異なる場合があるため、申告の際は必ず国税庁の最新情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。
まとめ:損失は終わりではない。次なる航海への準備だ
仮想通貨の世界で損失を出すことは、決して特別なことではありません。私を含め、この市場を生き抜いてきた者なら誰もが経験する、いわば「嵐」のようなものです。
大切なのは、嵐が過ぎ去った後、船を点検し、航海日誌を整理し、次の航海に備えることです。「仮想通貨の確定申告で損失のみ」という状況は、まさにその絶好の機会なのです。
繰越控除ができないという厳しい現実はありますが、それでも申告をすることで、年内の損益通算による節税、税務リスクの回避、そして何より投資家としての成長に繋がります。その一手間が、未来のあなたを大きく助けることになるでしょう。
失敗談こそが最高の資産です。あなたのその損失は、決して無駄ではありません。それは、あなたが市場の厳しさを肌で学び、賢明な投資家へと成長するための、尊い授業料なのです。

さあ、顔を上げてください。あなたの投資の旅は、まだ始まったばかりです。
【明日からできる、最初の一歩】
難しく考える必要はありません。まずは、今年利用した全ての仮想通貨取引所のサイトにログインし、「年間取引報告書」または「取引履歴」をダウンロードすることから始めてみましょう。それが、あなたの未来を守る、偉大な一歩となります。