暗号資産の確定申告、「20万円以下」の落とし穴。知らないと損する税金のリアル

「暗号資産で少し利益が出た。でも、20万円以下なら確定申告はしなくていいんだよね?」

そんな声をよく耳にします。かつての私も、そう考えていました。2017年のビットコインバブルで、初めて手にした大きな利益に舞い上がり、税金のことなど後回し。その甘い考えが、後にどれほどの悪夢を連れてくるかも知らずに…。

こんにちは。私は、浮き沈みの激しい暗号資産市場を7年以上も生き抜いてきたベテラン投資家です。あなたと同じように、いや、それ以上に大きな失敗を経験してきました。一時は1.5億円もの含み益を眺めて有頂天になり、その後の大暴落で1.4億円を失った絶望も味わいました。

その地獄のような経験から私が学んだのは、「市場を生き抜くとは、利益を出すことだけではない。得た利益を『守り抜く』知識と技術があってこそだ」という真理です。そして、その核心にあるのが「税金」との向き合い方なのです。

この記事では、多くの人が勘違いしている「暗号資産 確定申告 20万円以下」というテーマを、私の失敗談も交えながら、どこよりも深く、そして生々しく解説していきます。これは単なる税金の話ではありません。あなたの未来の資産を守るための、航海術です。この記事を読み終える頃には、あなたは税金への漠然とした不安から解放され、自信を持って資産と向き合えるようになっているはずです。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

「20万円の壁」の本当の意味。なぜ多くの投資家がここでつまずくのか?

「暗号資産の利益が20万円以下なら申告不要」という言葉は、半分は本当で、半分は危険な罠です。なぜなら、このルールには「ある特定の条件を満たした給与所得者」という、非常に重要な前提条件が付いているからです。

まず、暗号資産で得た利益は、原則として「雑所得」に分類されます。これは、あなたの給与などとは別に計算される所得です。そして問題の「20万円ルール」とは、「年末調整を受けている給与所得者で、給与以外の所得(この場合は雑所得)の合計が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要」というものです。

一見すると、とてもシンプルに見えますよね。しかし、ここに落とし穴があります。

第一に、これはあくまで「所得税」の話だということ。所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別途必要になるケースがほとんどです。住民税は、所得の大小にかかわらず、前年の所得に基づいて計算されます。申告を忘れていると、ある日突然、役所から通知が届き、延滞税を含めた請求に愕然とすることになります。私も駆け出しの頃、この通知を受け取って血の気が引いた経験があります。

第二に、「給与以外の所得」はすべて合算されるという点です。例えば、あなたが会社員で、暗号資産で15万円の利益を出し、さらに週末のアルバイトで10万円の収入があったとします。この場合、給与以外の所得は合計25万円となり、20万円の基準を超えるため、確定申告が必要になります。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

暗号資産の利益だけに気を取られていると、他の所得との合計額を見落とし、「知らなかった」では済まされない事態を招くのです。税金の世界では、無知は罪。これは、あなたがこの市場で資産を築いていく上で、決して忘れてはならない鉄則です。

要注意!「利益20万円以下」でも確定申告をすべき3つのケース

たとえあなたの暗号資産の利益が20万円以下で、他に所得がなかったとしても、確定申告を「した方が良い」、あるいは「しなければならない」ケースが存在します。これを知っているか知らないかで、あなたの手元に残る資産は大きく変わる可能性があります。

ケース1:損失が出た年こそ「未来への投資」

暗号資産投資は、荒波の航海のようなもの。利益が出る年もあれば、損失で終わる年もあります。もし、ある年に損失が出た場合、利益がゼロだからと何もしないのは非常にもったいない選択です。

確定申告をすることで、その年の損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます(繰越控除)。例えば、今年100万円の損失を出し、翌年に150万円の利益が出たとします。申告をしていれば、翌年の利益150万円から前年の損失100万円を差し引いた「50万円」に対してのみ税金がかかります。申告しなければ、150万円まるごとが課税対象です。この差は、決して小さくありません。

損失が出た年の確定申告は、未来の利益を守るための「保険」であり、「投資」なのです。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

ケース2:医療費控除など、他の控除を使いたい場合

年間で多くの医療費を支払った場合などに受けられる「医療費控除」。これは、確定申告をしなければ適用されません。

たとえ暗号資産の利益が20万円以下で申告義務がなかったとしても、医療費控除などを使いたいのであれば、その利益額も含めて確定申告を行う必要があります。せっかく使える権利を、知らなかったという理由で放棄してしまうのは避けたいところです。

ケース3:複数の取引所やDeFiを利用している場合

複数の国内・海外取引所を使っていたり、レンディングやステーキングといったDeFi(分散型金融)で収益を得ていたりする場合、自分でも気づかないうちに利益が20万円を超えている可能性があります。

特にDeFiの報酬は、日本円に換金していなくても、受け取った時点で利益として認識されるのが一般的です。これらの計算は非常に複雑で、専門の計算ツールや税理士の助けなしに正確な損益を把握するのは困難を極めます。

「たぶん20万円以下だろう」というどんぶり勘定が、後々の税務調査で最も指摘されやすいポイントです。少しでも心当たりがあるなら、まずは専門のツールで計算し、正確な数字を把握することから始めましょう。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

個人事業主・フリーランスのあなたへ。事業と暗号資産の税金は別問題

もしあなたが個人事業主やフリーランスなら、話はさらに変わってきます。会社員向けの「20万円ルール」は、原則としてあなたには適用されません。

事業所得がある方は、暗号資産の利益が1円でもあれば、事業の所得と合算して確定申告を行う義務があります。「20万円以下だから大丈夫」という考えは、個人事業主には通用しないと心得てください。

暗号資産の取引を「事業」として行っているのか、それとも個人の「投資」として行っているのかによって、所得区分(事業所得か雑所得か)も変わってきます。この判断は非常に専門的であり、経費にできる範囲も大きく異なるため、自己判断は禁物です。

事業の舵取りだけでも大変な中、複雑な税制に頭を悩ませるのは当然です。しかし、ここをおろそかにすると、あなたの事業そのものの信頼を揺るがしかねません。迷ったら、必ず暗号資産に詳しい税理士という「航海士」に相談することをお勧めします。

確定申告という「航海日誌」のつけ方。計算の基本と注意点

確定申告と聞くと、難解な計算式が並ぶ書類を前に頭を抱える姿を想像するかもしれません。しかし、基本はとてもシンプルです。「いくらで買い(取得価額)、いくらで売れたか(売却価額)」。その差額があなたの利益(所得)です。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

問題は、取引回数が多くなると、この「取得価額」の計算が複雑になる点です。例えば、異なる価格で何度もビットコインを買い増した場合、売却したビットコインの取得価額をどう計算するのか?

ここで使われるのが「移動平均法」や「総平均法」といった計算方法です。どちらを選ぶかはあなた次第ですが、一度選んだ方法は、原則として継続して使い続けなければなりません。最初の羅針盤の設定が、その後の航海を左右するのです。

また、取引手数料や、税金計算ツールの利用料、関連書籍の購入費などは「必要経費」として利益から差し引ける可能性があります。領収書や記録は必ず保管しておきましょう。ただし、何でも経費にできるわけではありません。プライベートな支出との線引きは厳格に行う必要があります。

これらの計算をすべて手作業で行うのは、正直なところ無謀です。私も昔、エクセルで管理しようとして挫折し、確定申告直前に何百もの取引履歴と格闘する地獄を味わいました。あなたの貴重な時間を守るためにも、暗号資産専用の損益計算ツールを導入することを強く推奨します。

初心者が沈む「3つの罠」。私の失敗から学んでほしいこと

最後に、私が過去に陥り、多くの初心者が同じように沈んでいく「3つの罠」についてお話しします。これは、教科書には載っていない、生々しい教訓です。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ
  1. 取引記録の不備という「霧」
    「後でやろう」が一番の敵です。取引所はいつサービスを終了するかわかりません。取引履歴は、最低でも月に一度はダウンロードし、複数の場所に保管してください。「記録がないから申告できない」は通用せず、最悪の場合、売却額の全額が利益とみなされる可能性すらあります。
  2. 申告期限という「嵐」
    市場の価格は24時間365日動いていますが、確定申告の期限(通常は3月15日)は一日たりとも待ってくれません。「まだ大丈夫」と思っていると、嵐は突然やってきます。準備は2月に入る前から始めるくらいの心構えが必要です。
  3. 無申告という「座礁」
    最も恐ろしいのが、無申告です。税務署は、あなたが考えている以上に取引所の情報を把握しています。私も過去の失敗で、追徴課税の通知を受け取ったことがあります。あの紙切れ一枚が、どれだけ心臓を冷やすものか…。無申告加算税や延滞税は、あなたの資産を確実に蝕みます。絶対に、この「座礁」だけは避けてください。

これらの罠は、正しい知識という「灯台」があれば、必ず避けることができます。

まとめ:明日からできる、あなたの資産を守るための第一歩

ここまで、暗号資産の確定申告、特に「20万円以下」というテーマの裏に潜む真実についてお話ししてきました。税金の話は、決して楽しいものではないかもしれません。しかし、これはあなたの資産を守り、この厳しい市場で生き残り、そして成長するための、避けては通れない道です。

確定申告は、単なる義務ではありません。それは、あなたの1年間の投資活動を振り返り、次なる航海に備えるための「神聖な儀式」だと私は考えています。

この記事を読んで、「何から手をつければいいかわからない…」と感じたかもしれません。それでいいのです。まずは、その不安を認識することがスタートラインです。

さあ、明日からできる最初の一歩を踏み出しましょう。

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産のイメージ

まず、今年利用したすべての暗号資産取引所にログインし、「取引履歴」や「年間取引報告書」をダウンロードしてみてください。

ファイルを開いて、その取引の多さに驚くかもしれません。それで構いません。まずは自分の航海の記録を直視すること。それが、あなたの資産を守り、賢い投資家へと成長するための、最も確実で、最も重要な第一歩なのです。

あなたの投資航海が、実り多きものになることを心から願っています。

※本記事に記載されている税務に関する情報は、2025年6月時点の法令等に基づいています。税法の解釈は非常に複雑であり、個々の状況によって異なります。また、将来の税制改正により内容が変更される可能性があります。確定申告を行う際は、必ず国税庁の公式サイトで最新情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。

この記事は参考になりましたか?

ビットコイン / 仮想通貨 / 暗号資産について、もっと知ろう!