レンディングの「貸出停止」は突然やってくる。あなたの資産を守る、たった一つの真実
「レンディングで手堅く資産を増やしたい」。そう考えているあなたに、まず伝えたいことがあります。かつての僕も、あなたと全く同じでした。2017年の熱狂的なバブルの中、僕はレンディングやトレードで資産を増やし、一時は1.5億円もの含み益を手にしました。まるで世界の王にでもなったかのような全能感。しかし、その先に待っていたのは、奈落の底でした。
バブルが崩壊し、市場が凍りついた時、僕の資産はわずか1000万円にまで激減。失った資産は1.4億円。レンディングサービスに預けていた資金も、もちろん例外ではありませんでした。「貸出停止」――その冷たい告知を見た時の絶望は、今でも鮮明に思い出せます。まるで信頼していた銀行に、ある日突然「あなたの預金は引き出せません」と宣告されたようなものです。
この記事は、単なるレンディングの解説書ではありません。僕が1.4億円という高すぎる授業料を払って学んだ、「市場から退場しないための生存戦略」そのものです。なぜ貸出停止は起きるのか?その裏に隠された、ほとんどの人が語らない不都合な真実とは何か?そして、どうすれば自分の資産を守り抜けるのか?
この記事を最後まで読めば、あなたは「高利回り」という甘い蜜の裏にあるリスクの本質を理解し、賢明な投資家として、この荒波を乗り越えるための羅針盤を手にすることができるでしょう。さあ、僕の失敗談という名の航海図を広げ、あなたの資産を守る旅を始めましょう。
悪夢の始まり。「貸出停止」とは一体何なのか?
レンディングサービスにおける「貸出停止」。この言葉は、単に「新規の貸し出しを止めます」という意味ではありません。多くの場合、それは「あなたの資産の引き出しも停止します」という、投資家にとっての死刑宣告にも等しい事態を示唆します。

2022年、Celsius NetworkやBlockFiといった業界の巨人が、次々とこの「引き出し停止」を発表し、世界中の投資家がパニックに陥りました。彼らのプラットフォームに預けられていた、数十億ドルもの顧客資産が凍結されたのです。これは対岸の火事ではありません。あなたが利用しているサービスでも、明日起こる可能性はゼロではないのです。
では、なぜこんなことが起こるのでしょうか? 表向きの理由は「極端な市場環境」です。しかし、その本質はもっと根深く、構造的な問題にあります。それは、私たちが預けた資金が、私たちの知らないところで、さらにハイリスクな運用に回されているという事実です。まるで、銀行に預けたお金が、勝手にギャンブルの軍資金に使われていたようなもの。市場が好調な時は問題が表面化しませんが、ひとたび暴落が起きると、その歪みが一気に噴出するのです。
この「リスクの連鎖」こそが、貸出停止という悪夢の正体です。そして、その引き金となる具体的なリスクについて、今から深く掘り下げていきましょう。
知らなければ資産を失う。レンディングに潜む4つの時限爆弾
レンディングという船に乗ることは、目的地に着けば大きなリターンを得られる一方、常に沈没のリスクと隣り合わせです。特にこれからお話しする4つのリスクは、船底に仕掛けられた時限爆弾のようなもの。その存在を知り、解除する方法を学ばなければ、あなたの資産は海の藻屑と消えるかもしれません。
市場リスク:価格チャートは欲望と恐怖の地引網
仮想通貨市場は、人間の欲望と恐怖が渦巻く巨大な海です。価格は一瞬で吹き上がり、次の瞬間には大嵐に見舞われる。このボラティリティこそが、市場リスクの源泉です。

特に恐ろしいのが「担保割れ」による強制清算です。例えば、あなたが100万円分のイーサリアムを担保に50万円を借りたとします。しかし、市場が暴落し、イーサリアムの価値が50万円を下回った瞬間、システムはあなたの担保を無慈悲に、そして自動的に売却します。これが強制清算です。市場のパニック売りが、さらなる暴落を呼ぶ「死のスパイラル」の引き金にもなります。
「レバレッジを低くすれば大丈夫」と言うのは簡単です。しかし、市場が熱狂している最中に冷静でいられる投資家は多くありません。僕自身、あの頃は「もっと借りて、もっと買い増せば、億り人だ!」と舞い上がっていました。その結果がどうなったかは、すでにお話しした通りです。価格チャートは、単なる数字の羅列ではない。それは市場参加者の感情の総体なのだと、骨身に染みて理解しました。
プラットフォームリスク:その「銀行」、本当に信頼できますか?
あなたが利用している中央集権型(CeFi)のレンディングプラットフォームは、いわば「暗号資産銀行」です。しかし、その内情は、私たち利用者からは全く見えないブラックボックスであるケースがほとんどです。
経営破綻のリスクはもちろん、最も警戒すべきはハッキングです。どんなに強固なセキュリティを謳っていても、過去に何度も大手取引所がハッキング被害に遭っている事実を忘れてはいけません。あなたの資産は、運営会社の杜撰な管理一つで、一瞬にして消え去る可能性があるのです。
さらに根深いのが、先ほども触れた「又貸し」のリスクです。Celsiusは、顧客から預かった資金をThree Arrows Capital(3AC)のようなハイリスクなヘッジファンドに又貸ししていました。そして3ACが破綻したことで、連鎖的に破綻へと追い込まれたのです。私たちは、プラットフォームを信じて預けたつもりが、実際にはその先のハイリスクな投機家に資金を提供していたわけです。この構造を理解せずして、CeFiレンディングに手を出すのはあまりにも危険です。

規制リスク:ある日突然、ルールが変わる世界
暗号資産の世界は、まだ法整備が追いついていない未開拓の荒野です。各国政府や規制当局は、投資家保護やマネーロンダリング対策を名目に、常にこの市場に鋭い視線を向けています。
もし、ある日突然、あなたの国の規制当局が「国内でのレンディングサービスを禁止する」と発表したらどうしますか?あるいは、特定のプラットフォームに対して業務停止命令を出したら?そうなれば、サービスは即座に停止され、あなたの資産は凍結される可能性があります。実際に、米国証券取引委員会(SEC)は、多くのレンディング商品を「未登録の証券」とみなし、厳しい姿勢で臨んでいます。
このリスクは、私たち個人投資家がコントロールできる範囲を完全に超えています。だからこそ、特定の国や特定のサービスに資産を集中させることの危険性を、常に認識しておく必要があるのです。
カウンターパーティリスク:信じた「相手」が裏切る時
これは、プラットフォームリスクと密接に関連しますが、「お金を貸した相手が返せなくなる」という、金融の最も基本的なリスクです。レンディングプラットフォームは、私たちから集めた資金を、資金を必要とする機関投資家やトレーダーに貸し出すことで利益を得ています。
問題は、その「貸出先」が誰なのか、私たちには全く知らされないことです。彼らの信用力は?財務状況は健全か?すべてはプラットフォーム任せ。もし貸出先がデフォルト(債務不履行)に陥れば、その損失は巡り巡って、私たち預金者が被ることになります。

2022年の連鎖破綻は、まさにこのカウンターパーティリスクが現実化した結果です。一つの大きな貸出先(3ACなど)が倒れたことで、ドミノ倒しのように多くのレンディング業者が破綻しました。信じていた相手が、実はとんでもないリスクを抱えていた。それに気づいた時には、もう手遅れなのです。
嵐を生き抜くための実践的サバイバル術
絶望的な話ばかりしてしまったかもしれません。しかし、リスクを直視することこそが、資産を守るための第一歩です。「もうレンディングなんてやめよう」と思うのはまだ早い。これからお話しする対策を徹底すれば、リスクを管理し、この市場と賢く付き合っていくことは可能です。
まず、心に刻んでほしいのは「Not your keys, not your coins(あなたの鍵でなければ、あなたのコインではない)」という、この世界の鉄則です。取引所やレンディングサービスに預けている資産は、厳密にはあなたのものではありません。その会社の資産なのです。だからこそ、自己管理が何よりも重要になります。
その上で、具体的な戦略は以下の通りです。
- 徹底した分散管理:卵を一つのカゴに盛るな、という格言は、この世界ではさらに重要です。「複数のプラットフォームに分ける」のは当然として、中央集権型のCeFiと、スマートコントラクトで動くDeFi(分散型金融)の両方に資産を分散させましょう。DeFiは自己責任の度合いが格段に上がりますが、カウンターパーティリスクを劇的に低減できる可能性があります。
- ハードウェアウォレットの導入:レンディングに回さない長期保有分の資産は、必ずハードウェアウォレット(コールドウォレット)で自己管理してください。これがあなたの資産を守る最後の砦、究極の金庫になります。
- 利回りの「なぜ?」を問う:年利10%を超えるような高利回りを謳うサービスがあれば、まず疑ってください。「その利回りは、一体どこから生まれているのか?」と。その源泉が、ハイリスクな投機である可能性を常に念頭に置きましょう。異常なリターンには、必ず異常なリスクが伴います。
- 情報源を自分で確保する:日本のメディアだけでなく、CoinDeskやThe Blockといった海外の一次情報に触れる習慣をつけましょう。また、GlassnodeやNansenといったオンチェーンデータ分析ツールを使えば、大口投資家の動きや市場の健全性を、プラットフォームの発表を待たずに把握することも可能です。(※ツールの利用は専門知識を要します)
これらの対策は、正直に言って面倒です。しかし、この面倒な作業を怠った者が、市場から静かに消えていくのです。

まとめ:あなたの資産を守るために、今日からできること
ここまで、レンディングの貸出停止リスクについて、僕の経験を交えながら赤裸々にお話ししてきました。脅かすような内容も多かったかもしれません。しかし、それは僕があなたに、僕と同じ轍を踏んでほしくないからです。
レンディングは、決して悪ではありません。ブロックチェーン技術がもたらした、素晴らしい金融イノベーションの一つです。しかし、その力を正しく使うためには、光だけでなく、その影も深く理解する必要があります。
市場の熱狂に踊らされず、常に最悪の事態を想定する。自分の資産は自分で守るという哲学を持つ。そして、学び続けることをやめない。この3つを徹底できれば、あなたは「投機家」ではなく、真の「投資家」として、この革命的な市場で長期的に資産を築いていくことができるはずです。
さて、この記事を読んで、「じゃあ、具体的に何をすればいいんだ?」と感じているあなたへ。
明日からできる、いや、今日からできる最初の一歩をお伝えします。

それは、あなたが今利用している、あるいは利用を検討しているレンディングサービスの「利用規約」を、もう一度、一言一句じっくりと読んでみることです。そこには、聞こえの良いマーケティング文句の裏に隠された、プラットフォームの権利とあなたの義務、そして「万が一の事態に、彼らは責任を負わない」という旨の文言が、必ず書かれているはずです。
その小さな文字にこそ、リスクの本質が凝縮されています。それを受け入れられるか、受け入れられないか。その判断こそが、あなたの資産の未来を左右する、最も重要な分水嶺なのです。
※本記事に記載されている内容は、2025年6月時点の情報に基づいています。暗号資産市場および関連する法規制は常に変化しています。投資に関する最終的な判断は、ご自身で最新の情報を確認の上、慎重に行ってください。本記事は特定の投資を推奨するものではありません。